~アルバム単位で聴く音楽~【夏のぬけがら】真島昌利 (1989) ノスタルジーでは終わらない、青春の記憶と普遍的な多摩の風景

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「夏のぬけがら」真島昌利

【夏のぬけがら】真島昌利 (1989) ノスタルジーでは終わらない、青春の記憶と普遍的な多摩の風景

一生聴くことになるだろう、永遠の名盤

皆さん、いかがお過ごしですか? 輪太郎です。

さて、洋楽育ちの私が、当ブログで邦楽を紹介するとなったら、何を選びましょう。
コンセプトがあって、丸ごと一枚で聴きたいアルバム。。。

やはり、コレしか無い。
真島昌利さんの「夏のぬけがら」。

ただひたすら、良い。

歌詞もメロディもアレンジも、とにかく、良い。
無駄も不足も、全く無い。

邦楽アルバム1枚だけ選ぶとしたら、私はコレを選びます。
もう30年以上前の作品ですが、いまだに色褪せず、毎年聴いていますが、全く飽きない。

ザ・ブルーハーツのデビューが1987年、3枚目の「トレイン・トレイン」の発売が1988年。
で、このアルバムはそんな彼らの全盛期、ギタリスト真島さん初のソロ・アルバムとして、1989年に発表されました。

アルバムとしての「夏のぬけがら」

90年代初頭だったと思いますが、J-WAVEの番組で、ゲストで呼ばれたバンドのメンバーがそれぞれ、自分の好きなアルバムを1枚だけ持ってきて紹介する、という番組だかコーナーがありました。

当時、スピッツさんが売れに売れていて、その番組に呼ばれた時のこと。
意外にもバンドメンバーは激しめのロックアルバムをチョイスしていたのですが、ボーカルの草野マサムネさんが、この「夏のぬけがら」を持ってきたのです。

フィールドこそ違えど、同時代のアーティストに評価されていたことに驚いたと同時に、あまり良く知らなかった草野さんというアーティストが、凄い人に思えてしまったものです。
分かってるなァ!みたいな。

同業者も唸る一枚なんですね。

さてこのアルバムは、自分が成功した一方、無名時代の親友が悩み苦しんでいる様を歌ったり、自分の故郷である多摩地方を抒情的に描写してみたり、かなりノスタルジックな内容のアルバムです。

オリジナル曲の他に、NHKみんなのうたから、また友部正人さんのカヴァーが収録されています。
また、近藤真彦さんに提供した「アンダルシアに憧れて」がシングルカットされています。
この曲は、歌詞がまるで一つの短い映画のようで、とてもドラマチックに仕上がった名曲です。

しかしそれらもすべて、一貫して同じ空気間の中に調和されています。

ちなみに、すでに世はCD時代でしたが、ちゃーんとアナログ盤が発売されておりました。
メルダックさん、分かっていらっしゃる。

それでは、実聴!

【A面】

「夏のぬけがら」真島昌利

「高校野球なんて見ないで」自然の中で育った「僕」が、「成長のドアを足で開けた」ところからこのアルバムは始まります。
冒頭から、ノスタルジック感てんこ盛り。

A面にはカヴァーが2曲、収録されていますが、一貫して流れる「懐かしさ」と「切なさ」。
ザ・ブルーハーツの楽曲もそうですが、彼の曲はどれも、どこか懐かしさを感じるんですよね。。。
これ、日本人のソウルなんでしょうか。

1. 夏が来て僕等

まず初っ端で、ノスタルジー路線を強烈に印象付けられてしまいます。

夏の暑さと涼しい風、アイスクリームに給水塔の影、夏休みの宿題、花火。
そして曲の最後、たった一行の詩で、今はもうその時の自分でない事を告白する、というドラマ性。

子供の頃の思い出は、誰にとっても常に「夏」なんですね。

2. クレヨン

抽象的な歌詞ですが、思春期特有の、思い通りにいかないもどかしさを歌っています。

真島さんは、決して技術的に優れたボーカリストではないんですが、表現力というのか、自分が伝えたいことを的確に伝える抒情性を持っています。

よく「もっと歌が上手ければ良い曲に聞こえるのに」というような事を言う人がいます。ユーミンさんなんてよくそう言われていました。

だけど、自分の言いたい事を、自分の言葉で、自分の声で伝えるからこそ響く、ということってありませんか?

私は、このアルバムもマーシー本人が歌うことに意味があると思っています。
歌のテクニックがある「他人」が上手に歌い上げても、そこにリアリティーは無いのです。

3. さよならビリー・ザ・キッド

A面のハイライトとも言える曲。

「21で結婚して、27でもう疲れて」
「今度子供が生まれるよ、それでも俺も終わりだ」

このアルバムを初めて聴いたのは、私が24の時なんですが、実は私、21で結婚して、その後27で子供が産まれたのです(笑)。
後付けではあるのですが、他人のような気がしない。

若い頃、一緒に夢を追った親友。
「何が君に起こったんだ、何かが君を蹴飛ばした」

成功する自分と、「やり場所のない苛立ち」を抱える親友。
時とともに失われていった青春を、見事に描写している佳曲です。

4. 風のオートバイ

「オートバイ」という単語が入る曲が、このアルバムには2曲、収録されています。
そのうちの1曲。

各所レビューなどを見ていると、この曲は意外とファンに人気があります。

お気づきの方も多いと思いますが、ザ・ブルーハーツ、特にマーシーの曲には「意外とラブソングが少ない」んです。
それが、いくつになっても聴ける要因でもあるんですが。

この曲は数少ない、正統派ラブソングとなっています。

5. 子犬のプルー

ノスタルジック路線の直球、来ました。
カヴァー曲2曲のうち、1曲が「NHKみんなのうた」から。

昭和の田舎の子供なら、誰でも経験するような、捨て犬を拾って育てる話。

1972年に放送されていたという事ですから、真島少年は10歳。
きっと心に残ったんでしょうね。

イントロのアレンジは、本家本元よりもこの真島ヴァージョンの方が、メロディにマッチしていて、さすがだと思います。

その10年後、石川ひとみさんのヴァージョンがあったのは知りませんでした。

6. 地球の一番はげた場所

カヴァー2連発ですね。
友部正人さんのカヴァー。

友部正人さんはフォークシンガーですが、友部さんとか泉谷しげるさんとか、フォークとかいったジャンルでくくるのがおかしく思えますね。
ボブ・ディランと比べちゃうと大袈裟かも知れませんが、何かを言いたくて伝える、という、本来の歌の意味を体現している人たちには多くの共通点があります。

なんと言っても、歌詞が良い。

また、ディープ&バイツさんのバックがとても良い。
素朴で飾らないギターソロは、グレッチ6119アニバーサリーですね、お茶色の。

彼らのアルバム、持ってたんだけどなー、どこ行っちゃったのかな。

【B面】

「夏のぬけがら」真島昌利

B面はさらに、ドラマ性に富んでいます。
熱く燃えて、そこからクールダウン。
そしてA面で提起された問題に、最後、見事に応えています。

それと、多摩三部作(私が勝手にそう呼んでいる)が、私にとってはハイライト。

ヒット曲の「アンダルシアに憧れて」が2曲目にきていますが、まったく違和感なく調和しているのはさすがです。

1. オートバイ

この曲は「オートバイ」が主人公ですが、誰でも皆、昔乗っていた愛車を思い浮かべるのではないでしょうか。

私は、16歳の頃の愛車、赤いタンクの「CB400F」が頭に浮かびます。
歌詞はマーシーの夢を歌ったものなのに、何故か16歳当時のいろいろなことが脳裏に蘇ってくるんですよね。

自分の世界観を歌うだけでなく、リスナーをリスナー本人の世界観に引き入れてしまう曲って、凄いなァと思います。

今でも、40年前の愛車、赤いヨンフォアが「夜明け前の交差点で、ゆっくりと翼を広げ」る姿が目に浮かんできます。

2. アンダルシアに憧れて

シングルカットされ、オリコンで13位。
マーシーと言ったらコレ、という、ファンの中では名曲の誉れ高い、人気の曲です。

たった5分で、短い映画を観せられたような、物語として完成された作品です。

聴きどころとして、金子飛鳥さんのヴァイオリンは外せません。
素晴らしい演奏。

また、 宮野弘樹さんのガットギターもフラメンコ感満載で、流石。

3. 花小金井ブレイクダウン

ここから、多摩三部作。

このアルバムでの、白井幹夫さんの存在感は凄いですね。
彼のピアノは、独学というから驚きです。

静寂の中のフルートと、サビでたたみかける生ギターと金子飛鳥さんのヴァイオリン。
空間を埋めるソリッドな楽器が際立つ、隠れた名曲です。

4. カローラに乗って

私事で恐縮ですが、彼の曲の中で一番好きな曲です。

フェラーリやポルシェでなく、カローラ1400フォードアだから成立する物語。
そして、「日野橋」、「多摩ニュータウン」。

とにかく、アレンジが秀逸。
ガットギターが見事にこの曲の世界観とマッチしていますし、白井さんのピアノも最高。
ソリッドな編成の中、特にベースラインが渋いです。
A面2曲目にも言えますが、飾り気の無いシンプルなフレーズと、固めで重いリッケン調のトーン。良いです。

この世界感と空気は、真島昌利というアーティストしか持ち得ない、唯一無二のものだと思います。

5. 夕焼け多摩川

多摩三部作、完結編。

白井幹夫さんのピアノと、宮野弘樹さんのガットギター。
バックはたった2人だけ。

何も変わらない、多摩川の風景。
変わっていくのは自分だけ、という、ただそれだけの事を歌っているんですが、、、。
「アンダルシア~」が短い映画という物語なら、この曲は1枚のポートレート、といった感じでしょうか。

夕焼けの寂しさだけでない、不思議な安心感を与えてくれる曲。

恐らく、マイナーで支配されている曲調でありながら、エンディングがメジャーで終わる、というのが要因でしょうか。

6. ルーレット

「何にどれだけ賭けようか。友達、今がその時だ」

私が思うに、この曲は「さよならビリー・ザ・キッド」のアンサーソングだと思うんです。

彼は、自分が有名になったからって、安易に親友に手を差し伸べるような偽善者じゃない。
自分が出来ることは、メッセージを歌にして伝えること。
そう言っている気がします。

ただのノスタルジーで終わらない、常に現実を見ている「リアリスト」であるところに、真島さんの作品の意味があります。
この1曲だけで、全てが救われる。最高のエンディングです。

シングルカット曲ではありませんが、そのキャッチーさからか、CMソングに使われておりました。

聴き終えて、、、、

私は、邦楽はあまり聞かない方ですが、このアルバムを聴くと、ネイティブの歌詞が持つ力、というものを考えさせられます。

うちの娘は「歌詞がわからない曲を聴く意味がない」という理由で、洋楽を聴きません(笑)。ある意味、正しい方向性でしょう。

私が邦楽をあまり聞かない理由は、逆に「ネイティブだからこそ」歌詞がマイナスして聴く気にならない、という事もあります。
純粋に、音だけを聴くことが出来ないですもんね。

とにかく邦楽は、老いも若きもラブソングばかりで、ちょっとウンザリなんです。
若い時はいいけれど、30年後も聴けますか、ということです。

そう言えば、私の好きな邦楽、、、ザ・ブルーハーツもそうですが、ラブソングをあまり歌わないアーティストが多いです。
最近ではCHAIさんが大好きなんですが、彼女たちに至っては、純粋なラブソングは1曲も無いんじゃないかな?

ラブソングでなくても、例えばメッセージソングとかでも、、、、。
大人に踊らされるな、と歌いながら、実生活では規則正しくゴミ出しをし、税金を納める。
そういった虚構は、ちょっと苦手なんです。

せっかくの歌詞なのに、普遍性が無い。
良い歌であっても、流行化してしまうんです。
(おっと流行歌と韻を踏んだぜ)

そういう意味では、このアルバムなんかは一生聴ける、耐用年数の長い世界感だと思うんです。

派手さはありませんが、とにかく、誰にでも響くものがある作品だと思います。
是非、聴いてみて頂きたい。オススメです。

それでは、また別の記事でお会いしましょう!


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